徒然の読み物

「ある小さな禅寺の心満ちる料理のはなし」

 

 

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大津市月心寺
二代目のご住職であり
2013年に亡くなられた村瀬明道尼さんの御本。

 

全143ページという小品ながら
惹きつけられる話がいっぱい詰まっていた。

最初は
丁寧ながら歯に衣着せぬ言い方や
読み手に
「・・と違いますでしょうか?」
と問いかける
ゆるぎない自分の価値観、美意識にだじろいだが・・

 

 

 

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庵主さんが
走井の名水を用いて作る精進料理
中でもゴマ豆腐は絶品と評判だったらしい。

 

「庭の力が四つ。お料理が三つ。お軸やらお花やらの部屋のしつらえ
そして私のおしゃべりで三つ。
月心寺の魅力を十にわけるとしたらこうなりますでしょうか。」
と書かれている。

室町時代、相阿弥の作といわれるお庭を見ながら
季節のしつらえの部屋でいただく
「君がため」のこころでつくられた精進料理・・

これが
庵主さんが書かれている
「曼荼羅」の世界に通じるのだろうか。。

 

 

 

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幸田文 「季節の手帖」

 

 

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いつか幸田文の本を読みたいと思っていた。
まずはこの本から。

この本は没後に一人娘の青木玉によって
選集された。

四季を通してその季節毎に自分の感性を揺さぶられる
情景を淡々とつづっていく。
それは決して華やかな風景や息を呑むような瞬間ではない。
普通なら見過ごしてしまう何気ない景色、瞬間なのだ。

白いこでまりの花の咲きかた、
川を渡る船を漕ぐ船頭さんの一連の動き・・

その季節しかない色、においが
短い文から感じられる。

私は冬の「山茶花」の文が一番記憶に残った。

『・・12月は色の消える月です。
ものの終わりははっきり線を引いたり、ばっちりと鮮やかにかざったりしてきまりをつけたいのが人情です。
それだのに、菊のないあとにこの花が残って咲きます。
花にはちがいがありませんが、見だてのある花ではない鄙びたものです。
その野暮くさい見ばえのしない花を飾るがゆえに、一年の終わりは平安におちついて無事に暮れるのではないでしょうか。
山茶花があることを思うと、12月はなるほど一年の鎮めだな、とうなずけます。
女の終わりも菊や紅葉と鮮やかなのもりっぱだけれど、私なら山茶花がいいとおもいます。』

これは、幸田文が1956年52歳で書いている。

 

 

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「ランドセル俳人の五・七・五」

 

 

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去年、図書館に予約を入れ、借りられたのが一月末。
行列待ちの人気本。

2013年春刊行された、小学6年生の俳人、
小林凛くんの本。

凛君は壮絶ないじめにあい、五年生の6月から不登校。

この本には、2010年8歳から11歳までの句、
一緒に暮らす祖父母、シングルマザーの母の暖かくも
凛とした想いも綴られている。

凛君はとっても感受性の優れた子供。
自然に対する目線が成熟している。
その言葉一つ一つ・・凛君がどれほど傷つき、
苦しんできたのだろうと思う。

そして、その時々に
「ハイっ、一句」と
誘うお母さんが強く、素晴らしい。

 

春の虫 踏むなせっかく 生きてきた

抜け殻や 声なきせみの 贈り物

ススキの穂 百尾のきつね かくれてる

夕日射し 冬の一日(ヒトヒ)を 回収す

 

生まれしを 幸かと聞かれ 春の宵

いじめられ 行きたし行けぬ 春の雨

 

 

<追記>

凛くんに触発され、
作ってみた、私の俳句第一号

 

人の世を まなざし凛と 冬のバラ

 

 

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「台所のオーケストラ」  高峰秀子


これは料理本なのです・・


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まず、ハードカバーの装丁が素晴らしい。

安野光雅さんの水彩画・・こんな台所でなら一日中、いろんな事をしていたい・・今どきのシステムキッチンにはないぬくもり、解放感に満ちている・・。

広々として、パンもケーキも焼き放題・・バーベキューだってへっちゃら、南仏の田舎の台所ってこんな感じ ?

憧れの台所の姿と高峰秀子さんの名前で、あまり中身を良く見もしないで購入した本ですが大正解・・愛読書となっております。




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肝心の本文はご覧の通り、小説とみまがうような作りになっており、和風、洋風、中華風と分けてあり、市販の調味料を利用したソース、タレ、つけ汁の合わせ方のコーナーがとっても使えるのです。

そして、その料理に関するエッセーがまた洒脱・・それだけでも本にできるような・・一冊で2倍楽しめる本になっております。

「手間ヒマかける時間はない。でもサ、チョット目先の変わったものは食べたいわ、それも買い置きの材料を使って、チョコチョコッと作れるやつを・・
そういう怠け者の情熱家のために、私は、私の貧しいレパートリーの中から、3分から小一時間ほどで出来上がる、私流の即席インチキ料理ばかりを選んで書いてみた・・」

と、ご本人は仰っている・・まさにそんな本です。。




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童話「100万回生きたねこ」と「スーホの白い馬」


動物ものは弱い・・


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「100万回生きたねこ」

佐野洋子さんは2010年11月に亡くなられた。
現在、ドキュメント映画「100万回生きたねこ」公開中・・詳しくはこちら

遺作となった「死ぬ気まんまん」も読んでみたい。




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「スーホの白い馬」

「中国の北の方、モンゴルには、広い草原がひろがり、そこに住む人たちは、むかしから、ひつじや、牛や、馬などをかっていました。
このモンゴルには、馬頭琴という、がっきがあります。がっきのいちばん上が、馬の頭のかたちをしているので、ばとうきんというのです。けれど、どうしてこういう、がっきができたのでしょう?
それには、こんな話があるのです。」

と、いう文でこの童話ははじまる。
そして、この本は絵がすばらしい、色合いも・・。

両方とも、まっすぐな子供の視線で読んでも、年月とともにいろんな経験を積んだ大人の視線て読んでも心に何かが残る筈、いっとき、無心で童話の世界に入り込んでいた。。




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abさんご


やっと読み終えた~~



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読むのにてこづって、内容を把握する間もなく読み終わった感じ。。

一番最初の章<受像者>、これがこの小説のすべて・・一番最初に一番意味不明な内容を持ってきているのでとっつきにくいことこのうえなし・・・。

内容自体は特別なことはなく、ある一家のどこにでもある生い立ちを子の目線で描写。

その描写の表現のしかたが、この小説の価値なのだと思う・・物事の様子や事象をこれでもかと細かく表現したり、普通一般的に使う言葉をあえて使わず、その言葉を辞書で引いたら出てくるような表現で表したり・・それが全体として一つのムードを作り上げている。。

ab さんご」という題名が秀逸、意味はわからないのだが・・ab は選択しなければならない岐路だと思うのだが・・さんごって・・・。




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キラッとひかるセンス


生活するうえでの基本を決定づけたといっても過言ではないかもしれない本・・・



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高峰秀子さん著『いいもの見つけた』
昭和57年発行・・小ぶりで割と薄くて1,200円・・当時としてはけっこうなお値段だった。

巻頭に載っているご自身の言葉
『年の功より亀の甲と言うけれど、人間商売を五十余年も続けていれば、誰でも白髪と一緒に苔も生えて来る。私にも私なりの苔が生え、もともと頑固な生まれつきらしい私は、いよいよ「老いの一徹」とでもいうのか、嫌いなものはすべてブッ飛ばし、好きなものはなめてもいいほど愛おしくなる、というほど「好き嫌い」が激しくなった。困ったことである。・・・』

そのなめてもいいほど愛おしくなった「いいもの」ばかりが載った本・・目からうろこ・・その用途以外の使い道を見つけ出す審美眼の持ち主です。。




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右は自分より先に逝くだろうご主人のための「骨壺」、冷えるだろうと漆塗りの木製品、左はなまめかしい桜の柄の染付・・もとは煙草盆に入っていた火入れらしいが、彼女は花入れとして使っていたらしい。。




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これはハンドバッグの中仕切り、いまでこそ「バッグインバッグ」でよりどりみどり、当時は手に入るような種類ではなかった。

高峰さんは粋筋の袋物やで手に入れたらしい。

高価なものは真似できないが、この本の中から参考にしているもの・・・小さな「片口、両片口の食器」、病人のお見舞いに「ガーゼのバスタオル」、軽く、柔らかく、乾きやすいという点で何にでも使えそう、そして、小さな引き出しに入る「区切りの付いたプラスチックの小物入れ」、バラバラに散っているこまごまとした必要品の整理に便利、彼女はこれを釣道具やさんで見つけたらしい。

この本を買ってから何十年とたった今でも、洋服や着物、靴、バッグ、コート・・物を買う時・・この本が頭をよぎるのです。。




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