オレンジと太陽
製作国:イギリス
原題:ORANGES AND SUNSHINE
これが記念すべき長編劇映画デビューとなるジム・ローチ監督が、イギリスとオーストラリアの間で1970年まで行われていた忌まわしき“児童移民”の実態とそれがもたらした悲劇を描いた社会派ドラマ。実在の女性マーガレット・ハンフリーズの手記を基に映画化。主演は「奇跡の海」のエミリー・ワトソン。1986年、イギリス、ノッティンガム。ある日、ソーシャルワーカーのマーガレットは、自らのルーツを調べるべくオーストラリアからやって来た女性シャーロットの相談を受ける。ノッティンガムの児童養護施設にいた彼女は、4歳の時に突然ほかの数百人の子どもたちと一緒にオーストラリアに送られたという。にわかには信じがたい話に衝撃を受け、調査を開始するマーガレットだったが…。
- 監督:ジム・ローチ
- 出演:エミリー・ワトソン、デヴィッド・ウェナム、タラ・モーリス
<TSUTAYAより>
いつか見たいと思っていた映画、「オレンジと太陽」。
魂が揺さぶられるとはこういう感じなのだろうか。
救いのないほど残酷で陰湿な世界がそこにはあった。
1986年、ソーシャルワーカーのマーガレットをオーストラリアからやって来た女性シャーロットが訪ねてくる、「私が誰なのかを知りたい」・・この言葉の悲痛さが全編を通して伝わってくる、マーガレットもこの言葉で調査に立ちあがったのだろう。
19世紀から1970年までイギリス政府は、施設に預けられていた子どもたちを児童移民として植民地に送っていた。その数はおよそ13万人にもなるという。
多くの子どもたちは、労働力として使われ、精神的、肉体的、性的虐待を受けるなど、悲惨な状況におかれた。
この行為には、政府、教会、慈善団体も深く関わっていた。
マーガレットの気の遠くなるような地道な調査で、少しずつ事実が解明されてくる。
2009年にはオーストラリアが、2010年にはイギリスが、事実を認め、正式な謝罪を行った。
その後、彼女は児童移民トラストを立ち上げ、イギリスとオーストラリアの両国で、今も児童移民を支援する活動を行っている。
映画自体は、悲惨な内容をこれでもかと見せつけるのではなく、全編に渡って、抑制のきいた流れで淡々と事実を丁寧に描いている。
その事によって、移民した人たちの悲痛な思いが余計深く伝わってくるのだった。
タイトルの『オレンジと太陽』は、
施設の児童に移民を促す男性の言葉、
「オーストラリアはいいところだぞ、毎日太陽が輝いて、毎朝、オレンジをもいで食べるんだ・・」
ジム・ローチ監督は、敬愛するケン・ローチ監督の息子、切り口は違うが精神はしっかり受け継いでいるようだ。
評価:★★★★★
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コメント
こんばんは
ついに白いねこさんもご覧になられたのですね。
この社会派映画は特に衝劇的でした。
そういった事実かあったのだと
そこに政府や聖職者がかかわっていたこと、対象が子供であったことなど、過去のあやまちを真正面からとらえたイギリスらしい映画でしたね。
投稿: bluerobin2 | 2014年11月16日 (日) 17時26分
この映画のこと、初めて知りました!
1970年まで、そんな事実があったとは・・・
是非みてみたいと思っています~。
こういうテーマをきちんと映画にできる才能もすばらしいです~☆
投稿: Komichi | 2014年11月17日 (月) 17時05分
*bluerobin2さん
他のブログで見、bluerobin2さんのブログで拝見し、是非見ようと思っていました~
過酷な運命を生き抜いてきた人達の静かな怒りが印象的でした。
白人至上主義で、アジア系を流入させないためにも・・という考えもあったというのはbluerobin2さんのブログで知りました。。
投稿: 白いねこ | 2014年11月17日 (月) 20時43分
*komichiさん
つい最近まで、あの大英帝国が自分たちの手で迷子を作り出していたという事に驚きました。
この作品は、声を荒げて糾弾するのではなく、静かに淡々と進んでいくので、余計悲しみが伝わってきました。。
投稿: 白いねこ | 2014年11月17日 (月) 21時08分