日の名残り
- 製作年:1993年
- 製作国:イギリス
- 原題:THE REMAINS OF THE DAY
日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作を基に「眺めのいい部屋」のJ・アイヴォリー監督が、侯爵に忠実な執事として徹底的にストイックに生きた一人の男の悲哀を描いた物語。恋を知らぬ彼は安っぽい恋愛小説に慰めを得、それを女中頭に見つかり頬を赤らめる。互いに愛情を感じながらもその感情を抑えこんでしまう彼に、彼女は待ちきれず、彼の友人と結婚し町を去る。戦後、侯爵がこの世を去り、ようやく自由を感じた彼は女中頭を訪ねるのだが……。
原作:カズオ・イシグロ
出演:アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン、ジェームズ・フォックス、クリストファー・リーブ、ピーター・ボーン、ヒュー・グラント、ミシェル・ロンズデール、レナ・ヘディ、ベン・チャップリン
映画賞:1993年 LA批評家協会賞 【男優賞】 アンソニー・ホプキンス
<TSUTAYA より>
昔一緒に働き、好意をもっていた女性を訪ねる「ロードムービー」かなと思っていたら、しみじみとした恋愛映画でした。
侯爵家の執事として個を捨て、プロフェッショナルとしてストイックなまでに仕える生き様・・気配を消しているのにその存在感・・スティーブンスを演じるアンソニー・ホプキンスの静の演技はみごととしか言いようがない。
その執事が唯一表情を和らげる女中頭ケントンにエマ・トンプソン・・私立の寄宿舎の寮長のような、いかにもイギリスにいそうな規律優先タイプに見える女性を好演、その女性がお酒の勢いを借りて、それでもオブラートにくるんで告白しても、自分の位置を守りきる執事・・切ないシーンです。
時が流れ、侯爵家も没落し、クリストファー・リーブ演ずる米国人富豪に仕える・スティーブンス・・仕事の件で二人は再会する。
人生の黄昏に足を踏み入れる年代に入り、20年振りに再会した二人は、お互いの気持ちが昔と変わらないのを認識しながらも口にすることなく・・また、別々の道を・・この別れは永遠の別れになるとお互い思いながら・・
雨の中のバス停で見送るケントンの表情は切ない・・でも、こころなしか輝いているようにも・・この世に自分と同じ思いを抱いて生きていく人がいるという幸せ・・そんな風に感じた。
時を経て、スティーブンスもこの新しい主人の元で少し変わっていくのかも・・と、思わせるラストです。
この映画のもう一つの見どころは、さすが大英帝国と思わせる重厚な映像・・調度品、フルセットの食器で飾られたテーブルセッティング等々見どころいっぱい・・使われている食器は「ロイヤル・ドルトン」か「ロイヤルクラウンダービー」でしょうね~・・みごたえあります。
作者のカズオ・イシグロは純粋の日本人、日本人でここまで英国を表現できるのか・・と、思っていたら、幼年期に渡英、その後帰化、英国人女性と結婚し日本語は殆ど話せないそうです。
評価:★★★★☆
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コメント
この映画、かなり前に劇場で観ましたが、とてもしみじみと感動したのを覚えています。
抑制のきいた演技と原作のよさもあって、いぶし銀のような感覚で好きな映画のひとつです。
重厚なインテリアや調度品からイギリス上流階級のセンスも感じられ、そちらも観ていて、さすが大英帝国の歴史…と、納得しました。
原作者のカズオ・イシグロの他の小説も素晴らしいものが多く好きです。
投稿: komichi | 2013年11月23日 (土) 22時43分
*komichiさん
ご覧になってたんですね。
私はカズオ・イシグロという作家を知ってからこの映画を見てみようと・・
若い時に見ていたら、この映画の表面しか理解できず退屈な映画と思っていたかもしれません。
「日の名残り」という題名は見る人によっていろいろに捉えられるでしょうが、きれいな言葉だなとしみじみ思います。
投稿: 白いねこ | 2013年11月24日 (日) 10時58分